ホスピス記事

11月18日の緩和ケア講座 多くの参加を

平成18年11月14日 山梨日日新聞「私も言いたい」より


がんという病気になることは、かつてから大きな恐怖だった。その大きな理由の一つは、がんによる、耐えがたい痛みの存在だった。親しい人の、のたうち回るほどの激痛を目の当たりにすると、心の傷は一生消えることなく残る、とよく聞く。
1980年代にイギリスで起きたホスピス運動の中心人物の一人、シシリーソンダース女医は、がんの体の痛みは医療者たちの知識と努力によって緩和できると、実践で示した。日本は欧米に比べてこの痛みの緩和が、がん治療の現場でなぜか遅れていることを指摘され続けてきた。最近のアンケートでも、日本の医師の半数が、薬の適正使用について十分な知識を持っていないことが発表された。モルヒネという医療用麻薬は、がんの痛み緩和に使用されることが多いので、各地域での使用量は、がん患者が十分な鎮痛を得て過ごしているかの目安になる。この目安によると山梨県は後進件とされているようだ。体の痛みが緩和されて初めて、自分の心や家族、人生の課題に向かい合えるからとても大切なことだと思う。
18日に甲府市内でがん疼痛(とうつう)セミナーが開催されるが、参加申込者が少なくて困っている。特に、薬剤の処方の責任を負う医師たちの関心が薄い。緩和ケアの専門家に任せておけばいいと考えずに、積極的に参加してほしい。山梨県に暮らしても十分な緩和ケアのサポートが受けられる、地域格差のない未来を望むことはぜいたくな願いなのだろうか。
内藤いづみ