ホスピス記事

「生」を考え直す契機に

2007年10月6日読売新聞より抜粋
 「いのち」って何だろう。誰もが自然に抱く問いを見つめ直したい。終末期医療にかかわり続けている在宅ホスピス医の内藤さんが、各分野で「いのち」と向き合っている3人との対談集を今年6月に出版した。

 3人は筆者が尊敬し、以前から語り合いたいと思い焦がれていた、ノンフィクション作家の柳田邦男さん、JT生命誌研究館館長の中村桂子さん、作家の曽野綾子さん。
柳田さんとは、「命のつながり」について意見交換した。「納得のいく看取り」をすることで旅立つ人の命が物語として人々に受け継がれるという話に及び、「息をひきとった瞬間が最期ではないことに希望を見いだせた」と言う。
 中村さんとの対談では、長い歴史を経て今のヒトとしての命があるという生命科学の観点から「命のリレー」を学んだ。「リレーを支えている自分の仕事に自信がもてた」と振り返る。
 曽野さんとは世相に流されずに自分の頭と心で考えて表現する「自分らしい生き方」について語った。「現状に流されず『目覚めなさい』というメッセージが印象に残った」と言う。
takaratoshokan.jpg対談当時はちょうど50歳。様々なヒントと刺激を受け「これで一区切りつき、次の段階に進めるかな」と活力がわいてきた。
これまでは終末期を迎えた個々の患者に寄り添ってきたが、今後は、健康な人も含めた多くの人が「いのち」を見つめ直せる空間を作りたいと考えている。
 それは、例えば「豊かな自然のある八ヶ岳高原で、おいしい食事と睡眠で心身を癒やし、自分が自然の中の一部であることを実感できるような施設」と目を輝かせる。
昔のように家で布団を囲んで看取ることが少なくなり、肉親の死を身近に経験しにくくなった。携帯電話やパソコンの普及で、人と人との触れ合いが薄れがちでもある。そんな現代だからこそ、「大人も学びを深め、命はもちろん、多くのことを子どもに語り継いでほしい」と願っている。