お手紙

いろいろな感情がつまった不思議な気持ちになりました

111013_01.jpg7月に岩手県北上市で講演させていただいた。被災県でもあり、私自身「いのち」「生と死」の話をどう伝えていいか、いささか迷いがあった。あまりにつらすぎるのではないか、と。
しかし参加者のみなさんの反応やいきいきしたエネルギーを体感しつつ、かなりいつもの私らしくいのちのお話を伝えることができた。感想もたくさんいただいた。
その中でTさんという高校生から真剣なおたよりをいただいた。ご本人の許可を得て、ここに掲載します。


「あした野原に出てみよう」から、私はたくさんの事を学びました。
痛みの事、告知の事、ご家族のこと、気持ちの問題、イギリスのホスピスについて・・・。
深く深く考えていくうちに、自分が出した答えや選択に何一つ正しいと言えるものはないんだと気付きました。
実際に本文の中に出てくる先生の問いかけの答えを自分なりに考えて紙に書き出してみましたが、自分が「これだ!!」と満足できるものは1つもありませんでした。
こんな世界にいづみ先生がいらっしゃって、こんな世界に私は行こうとしているんだと、いろいろな感情がつまった不思議な気持ちになりました。
先生からこの本を頂いて、何度も読み返して考えて。高校生の私から見て、正直「死ぬ」ということがどういうことなのか、よく分かりません。だからこそ、私はこの本を読んでからずっと「いのち」って何だろうと考えています。
毎日のように事故でも自殺でも戦争でもたくさんの人が亡くなっています。今回の地震でも私は内陸でしたらか、被害は多くなかったのですが、私が家に帰って家族の無事を確認してほっとして家族と明日からの心配をしている時、数キロ離れたところで、幼稚園児が、友達が、家族が流されていくのをその目にうつしている方々がいらっしゃいました。私は今もニュースを見ただけで、考えるだけで涙があふれます。「いのち」は簡単になくなって、そして明日があるっていうあたりまえのことなんて、これっぽっちもないんだと、そう思います。
こういった表現は良くないかもしれませんが、がん患者の皆さんは、たくさんの痛みと闘って、つらいことがいっぱいあると思います。でも例えどんなにつらくても「いのち」はあります。死ぬ時に、できるだけ後悔しないように(実際はすごく大変だと思いますが)することが在宅ホスピス医療全体の役目なんだと私は考えました。
これからの時間でも、私は自分自身に「いのち」とは何かを問い続けたいです。先生のご著書のおかけで、いっぱいいっぱい考えることができました。私のこれからのためにもとても貴重で、大切な時間をもつことができました。
また話はそれてしまいますが、医療のこと等を勉強している時、分からない言葉に出会います。
「霊的」「スピリチュアル」という言葉です。意味としては分かるのですが、実際どういうことか教えていただけると嬉しいです。


(内藤先生の返信)
大変なことですが、ずっと深く考えて下さってありがとう。3月11日以降、深く考える人と、何事もなかったかのように忘れる人とに世の中がふたつに別れています。
この深く考えること、自分や他人のいのちの根源について思いをめぐらすことが、スピリチュアルな世界につながる始まりだと思います。
スピリチュアルティはいのちというエネルギーのことだと私は思っています。