エッセイ

神戸の光たち


15年前に「『日本ホスピス・在宅ケア研究会』という、市民と医療者の集まりを作るから、発起人として参加してほしい。」と、神戸の青年医師リャンさんから突然連絡が入った。私は当時、山梨を中心に「ホスピスって何?」という啓蒙活動を始めていた。医療者(特に医師)の関心は薄かったので、リャンさんからのそういう依頼には些か驚いた。しかも、いきなり“日本”を冠に付けてしまう、大胆なアイディアを持つこの人物は何者?と感じたりもした。
その後、知り合って意気投合し、ふたりの友情は続いた。研究会も大きく成長して、今や国を挙げて“ホスピスと在宅ケア”の普及に取り組んでくれるまでになった。
12月16日に、神戸ひまわりの会(遺族の会)の講演会に招かれて、久しぶりに神戸で再会した。
「いやぁ、あの頃いづみちゃんは颯爽としていたよ。」
(まっ!今は貫禄ってこと?)
「リャンさんも黒髪で、ほっそりとしてたわねぇ。」
15年の間に起きた、それぞれのライフレッスン(人生の課題)を知っているふたりにとって、会話は辛辣でも、その底には温かい友情が流れているのだ。
心の中で、(頑張ったね)(よくやってきたね)(無理しないで)と呟いていたのだから。
koube_061226_01.JPGこうしてリャンさんのお陰で、15年前から神戸と縁が出来て、震災前も震災後の神戸も知っている。海のない山梨県から出て行くと、神戸は海によって世界中と繋がっている気がする。開放感があって素敵な街だ。洒落た喫茶店のコーヒーもタルトもひと味違う。今年はひまわりの会の中村さんが、ルミナリエに連れて行って下さった。腕を組んで大勢の列の中をゆっくりと歩いた。遠くで見ても美しく、そしてどこか儚げな光のアート。横の中村さんが言った。
「震災の後は、しばらく何処も真っ暗だったから、このルミナリエに辿り着いた時、明るくて、眩しくて、その光の力は、私たちの萎んだ心にエネルギーを注いでくれたのね。辛いことも多いけど、亡くなった人の分まで、とにかく生きなくっちゃ!」と。
ルミナリエは、今年で12年目。
内藤いづみ