エッセイ

内藤いづみ 2015年を振り返る~番外編「猫助け」

年末はまさしく師走の呼び方の通り何故かバタバタする。
何とか年末まで切りよく今年の決心を上手く決着させようとあがくからだろうか?
振り返ってみると、特に疾走した月は4月と8月(かな?)
4月はイギリスに旅したし、奈良でアメリカのハリファックス博士の『死にゆく人のケア 慈愛の心のセミナー』宿泊にも参加できた。

5月には心療内科トップの中井先生を招いてのホスピス学校。

7月初め、札幌から古平、車で利尻島という500キロ移動ツアーも無事行えた。
これは、北海道の友の応援のおかげ。その時のウニは最高に美味しかった。
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7月末、夫が一年で一番楽しみにしている甲府駅北口で開催される地ビールフェストには、東京から友人も駆け付けた。暑い中、地ビールは美味しかった。

8月初めの京都。最高気温が思い出される。真宗の皆さんのお招きでの講演会。保津川下りにもチャレンジ。
8月中旬、アイーダというオペラを観る。人間は大昔からずっと戦っている。
8月15日終戦記念日。『日本の一番長い日』という映画を観る。

10月~11月、新潟ツアー。新潟市から十日町へ。どこも知り合いや友の輪が広がって嬉しい。新潟では米と日本酒の美味しさを再発見。
滋賀守山市訪問。トンちゃんの家に泊めてもらった。お近くの延暦寺お参り。
11月末には岩手県北上市へ。その後、知人の案内で岩手北部観光。大沢温泉泊(宮沢賢治ゆかり)もの作りの岩手に触れる。
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12月は自分たち主催のホスピスセミナー。『人生はリハビリだ』
国立能楽堂でお能を観る。主演目の隅田川。
12月18に世界同時上映の『スターウォーズ』が気になる。何しろ私の青春時代のど真ん中の映画だから。
全ての遠征はその地の友人たちのサポートで豊かなものになったし、私が留守の間に地元を守ってくれている仲間たちと家族のサポートのおかげでもある。感謝でいっぱいだ。
11月から全国地方TVで早朝、テレビ寺子屋放送中。
今年もぼつぼつながら茶道を体験させてもらえたこともありがたかった。日本文化の歴史にいつも感嘆する修業の場。
以上、主なものだけあげてみた。(プライベートの多くは秘密です。ウフフ)
頑張った!そして、充実した一年だった。ご縁があった患者さんたちに感謝します。
改めてたくさんの恵みに感謝致します。

~ここで番外編~
私のクリニックのスタッフは全員動物好き。特に猫は大好き。
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地域猫を捕まえては、避妊させる。飼い主を探すというお節介もしている。いい獣医さんにも知り合って、助けてもらっている。
この秋、3匹の子猫を母猫がクリニックの前庭に連れて来て姿を消した。
クリニックの前の道路は交通量が多く、子猫が母を探して渡ろうとするとひかれそうになる。夜になると震えて植木のしげみに3匹が寄り添って寝ていた。この3匹の子たちの幸せの未来は?

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皆が一生懸命飼い主を探した。私たちは皆、既に飼っているので引き受けられない。
そんな折、10月に静岡へ講演会に出かけた。講演後に本のサイン会をしていると、中年の女性が「私は獣医です」とおっしゃった。私は「子猫の飼い主を探しているんです」と少しおしゃべりをした。その方も「探してみますね」と励ましてくれた。その方の後ろにおとなしそうな若い女性が並んでいた。
さて、その夜、その若い女性からホームページの問合せフォーム経由でメールを頂いた。
「もし、飼い主が見つからないようならば、私が引き受けます」と。
子猫ちゃんたちは日に日に成長する。可愛い時に一日も早く飼い主と暮らしてほしかった。努力したが地元では見つかりそうもなかった。
私はその方に、雄2匹を引き受けてもらおうとお願いした。
静岡くらいなら車で連れて行ける。連絡を取ると、何と、その方は名古屋の近くにお住まいだった。名古屋?! 
この多忙な私がすぐに連れて行けるだろうか?
「エッ?名古屋!」
私は講演ツアーが多く、プライベートに旅をすることはほとんどない。それが何と、その月末に親友とふたりで名古屋の徳川美術館に行くことを決めていたのだ。一年に一回の自分だけの旅。茶道見展。千利休が切腹前に作った茶匙泪(なみだ)も展示されるという。何より、実はこの旅は去年亡くなった共通の親友の慰霊の旅。小さな修学旅行みたいな思いがしていた。
しかし、ハードスケジュールの私が何故、名古屋行きを決めたのか、自分でも納得いかなかった。「そうか!」ここに繋がるためだったんだ。神様ってすごいな、と天を見上げた。
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その方にお願いして、仕事を調整してもらい、名古屋駅で朝10時に会うことにした。猫ちゃんたちは健康チェックをして、うちのスタッフが朝早くから準備万端。キャリーケースに大人しく2匹は入り、甲府駅の朝焼けの中を出発。朝6時。身延線特急ふじかわ。静岡で新幹線ひかり号へ。子猫2匹は新幹線に行儀良く乗った。何のトラブルもなく名古屋着。ほっとした。
こうして2匹を無事に渡すことができた。
名前を付けさせてもらった。「ひかるとひびき」
その方は大切に育てて下さっている。
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「2匹が来て、ハウスがホームになりました」と言って下さる素敵な女性である。残った雌の子猫は生まれつき目が悪かったけれど、一緒にホスピスの心を学ぶ知り合いのつてで、富士宮へもらわれて行った。手渡す場所は朝霧高原。
こうしてちいさないのち3つがこのクリスマスに、それぞれ温かい手に抱かれて幸せに過ごしている。
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どうぞ、世界中のいのちがこの冬、幸せにキラキラ輝きますように~
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