幸せな生と死をサポートする在宅ホスピス医

あなたは、最期をどう過ごしたい?~幸せな生と死をサポートする在宅ホスピス医、という見出しで、アントレ2008年8月号に掲載された記事をここでご紹介いたします。アントレは独立した起業家を目指す人向けの雑誌(リクルート社発行)です。


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 そもそも医学部に入学してすぐ、先端医療優先主義に疑問を感じちゃって。当時はまだ本人へのがん告知がタブーな時代。本人だけが知らされないまま、日陰のお寺みたいな病室で、苦痛と恐怖と孤独の中で亡くなっていく。医者との信頼関係が生まれるわけがないし、本人も家族もつらいだけ。人としての患者の存在がない医療現場にずっと違和感があったんです。そんな時に出会ったのが末期がんの23歳の女性。「家に帰りたい?」と聞いたのが今の私の始まりでした。
 結婚後、英国で出会ったホスピスケアは、偶然ではなく必然だと思えました。ドクターに加えて優秀なナースとボランティアの連携で、いかに最期の時間を自宅で家族と幸せに過ごすかをサポートする。末期がん患者が一番望む「痛くない。苦しくない。ちゃんと眠れる。食べられる」をかなえ、家族の後ろにいるのが私の使命だと。
 帰国後、病院に勤務しながら在宅ホスピスの講演活動も始めたけど、やはり自分の哲学を貫くなら、組織に属さず自分ひとりでやるしかないと独立。ホスピスの言葉自体なじみがない時代で、痛みをなくすモルヒネの投与も誤認が多く、今でも医療関係者にさえ誤解されることも。でも20年たって、少しは「在宅の意義」が浸透してきたかと実感もあります。その思いで、世代を超えて誰もがホッとできる場を実現できればと考えています。
子供の頃から自然の中で五感が豊かに育てば、命の尊さも最期の在り方も広まるんじゃないかしらと。