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母との思い出

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月刊 お母さん業界新聞 2013年7月号「母たちへの一文」より

誰にでも、母と自分との最初の思い出があると思う。私は4歳の頃だろうか。冬だった。

 その頃、母は、新装開店した食料品店が忙しくて、私はお店に行って母の仕事が終わるのをじっと静かに待っていた。お店と自宅は大人の足では10分位だが、子どもの足では永遠と感じるほど遠かった。

 やっと2人で帰れる時になった。当時は街灯もなく、車も少なく、道は暗かった。私は「寒い」と言ったのかもしれない。母は上半身ごと頭からすっぽりと自分の半纏の中に私を包み、ギュッと抱きしめながら家路を急いだ。その安心感。温かさ。50年経っても、そのぬくもりの思い出がさめることはない。

 内田麟太郎さんの絵本『おかあさんになるってどんなこと』(PHP研究所)の中に、「おかあさんになるのは、この3つができること」とある。「①子どもをギュッと抱きしめる ②名前をやさしく呼ぶ③いつも心配してあげる」。

 簡単そうで、でも深い愛。母にしかできない3つのこと。

 子どもが大きくなってしまうとギュッと抱きしめることはなかなかできない。

「若いママさんたち、できる時にたくさん抱きしめて」と、私は子連れママを見ると、いつも心の中で声援を送っている。そして、ずっとできること。それは、子どもを心配してあげること。

 91歳の母は、57歳の私のことを、今でも心配してくれている。「いづみちゃん、大丈夫?がんばり過ぎないでね。肩揉んであげようか」。

 母親って、なんて素敵なんだろう。


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