エッセイ

春は駆け足

いつも重症の癌患者さんがいらっしゃる。
今の患者さんは90歳近い女性。


端正で綺麗な方。病気は重いけれど、私たちとの出会いをとても喜んでくださって、往診するととびきりの笑顔を見せてくださる。
ご家族との、仲良し時間が続くように、私も訪問看護師達も最善の努力をしているつもりだ。
彼女が桜の時を迎えられるかはわからない。ご本人は自然体で穏やかである。
「桜が見れるかなあ」と微笑んでいる。それを聞いてご家族は、滲んだ笑顔になる。

この写真は我が家の杏(あんず)の花。
春は何て素敵な色を見せてくれるのだろう。

往診時、私は手を彼女の胸に置いた。そのあたりが、少し痛い、とおっしゃるので。
「この辺ですか?」と問うと、私の指を見て「先生、爪綺麗」と答えて微笑んだ。
確かに、私は久しぶりに爪を前夜、桜貝色に塗ったのだった。
私も微笑みで返した。
春の息吹はあちこちにある。


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