内藤いづみ著書

最高の一日 最良の最期

泣いたり笑ったりする生命のデュエット、あなたも参加して生命の合唱を!(永六輔)
淀川キリスト教病院名誉ホスピス長・柏木哲夫氏と、在宅ホスピス医・内藤いづみ氏の初の対談集。
人生の最期をいかにして迎えるか。
誰もが直面する終末期医療という問題に対してユーモアを交えながら、熱く語り合った一冊。
柏木哲夫 , 内藤いづみ 共著。


単行本: 172ページ
発売元: 佼成出版社
ISBN-10: 4333025117
ISBN-13: 978-4333025114
書評「最高の一日 最良の最期


書評 辻村恭江先生より
 このたび柏木先生と内藤先生の対談集がこのような形で出版されたことは、本当に嬉しく思います。特に私は名古屋と伊勢で行なわれた対談について深く関わった者として、とても感慨深いです。
 何ページか読み進んだ時、あの日の情景の細部までもが私の脳裏に色鮮やかに甦ってきました。特に第1回目の対談は、今でも鮮烈な印象として私の記憶に残っています。
名古屋国際会議場で開催された第33回死の臨床研究会のランチョンセミナー(タイトル「いのちについて語りたい」)として柏木先生と内藤先生の最初の対談が行なわれたのですが、その時私は会場一杯に埋め尽くされた聴衆(座席が全然足らなかったので通路にも座っていただき、入口の外まで人があふれていました)の熱気に圧倒されながら、とても初対面とは思えないお二人の息のぴったり合ったやりとりが交わされるすぐ間近で、座長の役をつとめさせていただくという恩恵にあずかりました。
わずか1時間という限られた時間の中で、病院と在宅のそれぞれの持ち場でホスピスを実践してこられたお二人が、ご自身の経験や忘れられない患者さんのエピソードなどを交えつつ、笑いあり・感動あり・なるほどと思うお話ありのエンターテイメント性に富んだ対話で、いのちについての大切なメッセージを私達に伝えてくださいました。
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 この時、柏木先生・内藤先生の組み合わせは、私の事前の予想をはるかに超えた類稀な良い相性と判明し、絶対にこの続きを伊勢で!というその時の私の直感と閃きに近い強い思いから、その直後に非常にご多忙なお二人を口説き落とし、私の普段の生活と仕事の場である伊勢の地にお招きすることにしました。実はその時、私の勤務先の病院が約2年後に新築・移転する際に、緩和ケア病棟を開設し、私がその病棟を担当することが既に決まっていたのです。伊勢にホスピスを!という思いは以前からあり、それで普段から一緒に活動していた「『終わりよければ』いせの会」代表のいせ在宅医療クリニックの遠藤先生や、その他市民の方々と共に具体的な企画をしました。
 伊勢での対談は2度目ということもあってさらに相性良く、1回目以上に大いに盛り上がりましたが、この時は対談以外に前日からのイベント(前日の柏木先生による講演、五十鈴川での禊、懇親会、翌日の伊勢神宮早朝参拝など)で、先生方と一緒に過ごす時間がたっぷりあったので、私自身はどちらかと言うとそちらの方が忘れられない思い出になりました。
 これら2回の機会は、これから私がお二人の先生と同じ領域の仕事をさせていただく上で良い学びをさせていただいたと思っており、私にとってはとても大きな心の財産になっています。
 内藤先生から書評を!ということで御依頼を受けたのですが、ついつい私の個人的な思いが先行してしまいました。私の大切な友人・知人には、ぜひこの本を勧めたいと思っていますが、お勧めする理由として私が気に入ったところ・良いと思うところを以下に述べたいと思います。
 まず、最初に手にした時、表紙の色合いやデザインがとても気に入りました。帯に書かれたメッセージもとてもいいですね。本のタイトルも良いと思います。「最高の一日 最良の最期」・・・最初、誰にとっての最高や最良なんだろう?とふと思いましたが、患者さんだけでなく、患者さんの傍に寄り添うご家族や医療者もきっと含まれているのだろうと今は推測しています。
 それから、本の構成も大変良いと思います。「はじめに」を柏木先生、「おわりに」を内藤先生が執筆されており、名古屋、伊勢、松江での対談がそれぞれ対談1、対談2、対談3として記録されています。そして、それらの対談の記録だけでなく、お二人のエッセイもそれぞれ5つずつ掲載されているというものでとても内容が充実しており、読んで絶対に損はなく、おススメです。
 ただ、一つだけ私が気になるのは、伊勢での対談の時の写真に余計な人物(それは私)が写っていること。滅多にない記念写真だと思う反面、自分の写真を多くの人に見られるのは居心地が悪いです。名古屋と伊勢の2回とも座長としてお二人と一緒の舞台の上に座っていたのは、今だから告白しますが、大勢の人の目にさらされる緊張感があり、正直苦痛でした。そう感じながらも実際には、お二人のユーモアたっぷりのお話で結構な頻度(私の感覚では30秒に1回くらいの感じ)で笑っていたと思います。
「にもかかわらず、笑うこと」というのが、ユーモアの定義の一つですので、この状況はまさに当てはまりますね。確かに笑うことによって、私の緊張感はずいぶんとほぐれ、その時とても救われた気持ちがしました。でも本当は座長という立場で舞台の上ではなく、一観客としてお二人の対談を客席で聴きたかった。そうすればもっと大口開けて笑えたのに・・・
 次回は人目を気にせず思いっきり客席で笑えるように、ぜひ来年新しくなった伊勢赤十字病院(山田赤十字病院から名称変更)にお二人をご招待し、私は客席の最前列で先生方の対談を聴かせていただけるようにしようと今から考えています。
 以上、私の個人的な思いに満ちあふれたご紹介文となってしまいましたが、どうか皆さま、実際にお手にとって読んでみていただくことをお勧めします。


ご感想(ご主人を看取った70代の遺族より)

一生懸命に体中を使って病の人を見つめている事がおふたりのお話で分かりました。
くれぐれもお体を大切にして下さい。
希望ですから。


書評 (60代男性)

普段は読書をしない私ですが、2日間で読ませていただきました。特に心に残ったのは、「病院と自宅」という当たり前のことかもしれませんが、患者さんのおかれている場所(環境)の話です。なるほど、なるほど頷きながら読ませていただきました。そして、先生の「優しさ」。
私たちは、行政が仕事の場ではあるのですが、市民の皆さんの立場を今一度考えさせられました。
私たちは、住民(市民)皆さんのために仕事をしていることをもう一度しっかりと受け止めなければならないのです。よく行政の職員は「上から目線」ということを聞きます。私たちも知らず知らずのうちに「福祉の専門用語」デイ・国保・生保等言葉を短縮して市民の方と接することが多々あるような気がします。在宅ホスピスの重要性は、患者さんと対等な立場で接する環境で仕事をすることかも。本を読み、考えさせられることばかりでした。
1.17から17年が過ぎ、あと2ヶ月で3.11も1年が過ぎようとしています。時間だけはあっという間に走り過ぎます。平成23年度も私は何をしたのだろうか、何ができたのだろうか。考えながら仕事をしていきます。


書評 ばらのおうち文庫 高橋洋子様より

人間を愛してやまない柏木先生と内藤先生の”がっぷり四つ“で始まる対談は、打てば響く小気味の良さで最後まで引っ張られます。
軽妙に進行する会話も、実はリアルタイムの医療事情・社会事情を織り交ぜた深い内容。
ところどころにちりばめられるユーモアに裏打ちされた笑いと涙の患者自慢には、”いのち“の光が降り注がれています。
柏木先生と内藤先生の魂が、そして「有難う!」の言葉で旅立った魂たちが、言葉を超えたところで喜び合っているようにさえ感じました。
実はとても深く心に残る言葉に、付箋をつけておりましたら試験前の教科書のようにとても賑やかになってしまいました。(笑)
お二人の温かな人間性がほとばしるこの一冊は既に医療と言う枠を超ているように思います。等しく与えられた“いのち”に感謝!


書評 西來武治さんのホームページより


「最高の一日 最良の最期」
このタイトルは著書の名前です柏木哲夫先生と内藤いづみ先生の対談集です(佼成出版社刊 1400円+税)
以前からいろいろご指導をいただいている在宅ホスピス医としてご活躍の甲府市のふじ内科クリニック・内藤いづみ院長先生から贈呈を受けました
以前 東京親鸞会の一日研修で甲府市の先生を訪ね 宿の都合で バスの中で先生にお話をいただいたことがあります
バスの中でお話したのは先生にとってははじめてのことでしたが 私たちにとっても
とても印象的でした
それは ただバスの中でというのではなく午前中クリニックで患者さんを診たあと先生は在宅の患者さん しかもがんをかかえて死と向き合う患者さん宅を訪ねてのいわゆるホスピス医として大変なご苦労をされている医師です
私も長年親しくさせていただいています
柏木哲夫先生はアメリカ留学から帰られた後大阪の淀川キリスト教病院で精神科医として勤務して 日本ではじめてホスピス病棟を設立した先生です ホスピスというと施設と思っている人が多いのですが ホスピスはプログラムなのです
それを日本で初めてスタートさせたのが柏木先生です
 当時私は早々に先生を訪ね取材させてもらった後1998年には 佐賀市で行われた第22回日本死の臨床研究会の年次大会で[高齢者と死の臨床]のシンポジウムに「電話相談と臨床仏教学」と題してシンポジストとして参加させてもらいました
その後 先生は大阪大学教授になられ 今は金城学院大学の学長になられています
この両先生の対談とエッセイ集です
あなたの最期は病院ですか それとも在宅ですか
改めて自分の最期をしっかりと学ばせてもらいましょう


書評 絵本作家・内田麟太郎さんのブログより

かっこいい!
 柏木哲夫さん(金城大学学長・淀川キリスト教病院名誉ホスピス長)と内藤いづみさん(ふじ内科クリニック院長・NPO二本ホスピス・在宅ケア研究会理事)の対談集です。ホスピスにとって、いいえ、人間にとっていかにユーモアが大切か語られています。ユーモア=人間力といってもいいでしょうか。
 内藤さんのお話から。末期がんの方に「何が食べたい」と聞かれます。「うまい天ぷら」。内藤さんは八ヶ岳山麓の料理人に白羽の矢を立てます。おいしいアスパラガスの天ぷら。満腹された患者さんはいいます。「先生、うまかった。今日は俺の奢りだよ」。末期がんの患者さんにして、このセリフ。カッコイイ!
 柏木さんのお話から。─すごくユーモアのある方だったんですけど、だんだん弱っていかれて、ある日の回診で「いかがですか」って聞いたら、「先生、おかげさまで順調によわっています」って。(笑)これが、こちらにすごく慰めになったんです。いたわられたという感じがしました─人間はエライなあ。
 内藤さんは講演でわたしの絵本『なきすぎてはいけない』(絵・たかすかずみ 岩崎書店)を読んでくださっている方です。なぜ、読んでくださっているのか。その話も出ています。