講演報告

腎不全看護学会にて

腎不全看護学会にて、教育講演を担当いたしました。専門家向けです。

学会チラシ
しかし、最近とみに人生の最終章での自己決定があちこちで問いかけられています。
ゆっくりと熟成させながら、出来たらいいなあと思います。

-講演要旨-
患者の声にならない声を聴けるか?
患者の自立と選択が尊重される未来に向けて
ふじ内科クリニック 内藤いづみ

はじめに
このたびは、長年親交を持ち、生病老死の苦しみにしっかりと向かい合って実践して下さる宗教家 高橋卓志さんとご一緒できて光栄でした。いのちの自立と選択についての高橋さんの特別講演は素晴らしいものでした。

私の専門は進行がん患者のための在宅ホスピスケアです。
人生の最終章を生きる人への支援という点では共通点があり違うのは、透析で生きる人の余後は一般的に長く、ホスピスケアの患者さんたちの残された日は短い、という点です。(平均2~3ヶ月)まず、私の辿った道のりをお伝えしたいと思います。

在宅ホスピスケアが誕生した理由
医療制度が整わず、社会的理解度が乏しいとしても、「在宅ホスピスケア」を実践することが、自分の医療者として立つ場所と自覚して、30年近く歩んできました。最近は国の方針の基に、重症患者さんがどんどん家に戻っています。しかし、ターミナル期の選択については多くの課題が生じています。本人たちの選択としての基に帰っていないのもひとつの原因です。
主に進行がん患者を対象にしたホスピスケアは、イギリスで1960年代に誕生しました。がんによる身体的痛みをモルヒネなどの鎮痛薬を安全に使用して緩和する方法を世界中に広めた中心人物が、女医のシシリー・ソンダースです。まず体の痛みを緩和し、次に心、社会的、そして霊的(スピリチュアル)な痛みに向かい合う(トータルペインに向かい合う)ホスピスケアの理念は、やがて宗教、人種、国境を越えて緩和ケアという医療の形で世界中に広がっています。
私は1980年代後半に、英国スコットランドに数年暮らす間に、市民運動としての現代ホスピスの誕生と発展に参加することができ、医師として目から鱗が落ちた思いがしました。イギリスでみたホスピス運動とは、医療に預けっぱなしだった自分のいのちを、自分に取り戻し、自分で未来を選ぶ道だと感じたのです。ホスピス運動は、いのちの主人公の自立といのちの選択を応援する活動なのです。いわば、いのちの解放運動と言ってもいいかと思います。そして、「治らない」と受け止めた患者をトータルで支える実践です。今の日本で、特にターミナルに向けて本人の理解、覚悟、選択が十分にあるかと危惧します。透析も状況は似ていないでしょうか?

在宅ホスピスケア実践  日本での問題点
① 死について考えることがない。社会の中に死の準備教育がない。
死について、いのちの最後について考えることが先送りされている。
この課題はそのまま腎不全ケアに重なると思う。
② 介護者がいない。(核家族)
③ 引き受けてくれる専門的な医療チームが見つからない。
④ 家では症状のコントロールや痛みが取れないと思って不安である。
⑤ 病院といつも繋がっていたい。できれば入院したい。

看取りは互いに学び合う時
ホスピスケアでトータルペインが合格点で緩和できたとき、患者は「ありがとう」と「さようなら」を言うことができる。私たちはそういう体験を重ねてきた。「ありがとう」と「さようなら」を聞けた介護者、家族のその後のグリーフケアはいのちの感謝に彩られる。

腎不全は治らない
医療技術の進歩により、透析も進化し、腎不全の患者の目先の「死」は回避され、いのちは伸ばされる。そのプロセスで患者の選択を支援し、トータルないのちに向かい合えているだろうか?と私は改めて問いたいのです。

患者は声なき声を秘めていないだろうか?
当面のいのちの危機が透析治療によって伸ばされるがゆえに、どういう選択があり、人生の最終章をどう生き抜いたらいいのか、という患者の声なき声は出しづらくなっていないか?その声を聴き、たとえ回答がすぐできなくても、どこかで一度、伸ばされたいのち(もし透析がなければ・・・)ということをオープンに話すことを広く実践してほしい。それにより、いのちの輝きは違うものになるという可能性を私は信じたい。最近は透析の現場での自己決定の支援の動きが出ているとこの学会で知った。Yes、Noの回答ではなく、患者のトータルペインに寄り添いながら、ゆっくりと考えて選択が熟すのを待ってほしい。情報を得て冷静に考え、選び、納得する。そういうプロセスに私たちはあまり慣れていないがゆえに。

患者のいのちの主人公としての自覚
いのちの在り方の選択。それらが今後の透析の現場でも当たり前に語り合える未来にこそ、働く者たちの士気も高まると思える。


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