メディア出演情報

『いい医者 いい患者 いい老後-「いのち」を見つめる二人旅』

100811_01.jpg(やくしん2010年8月号から抜粋)
本書で対談している永六輔さんと内藤いづみさんとは、二十年の親交の仲。日本の医療・老後・看取りについて、全国で永さんと対談形式の講演を行なってきた内藤さんに、講演での思い出や本書に込められた思いを語っていただきました。


永さんとの講演を始めた経緯は?
 二十年前、私は山梨に拠点を置き、在宅でのホスピスケアと看取りを始めたのですが、当時は、「患者を病院から自宅に戻すなんて」という見方が大半でした。それでも、ホスピスケアの発祥地・イギリスで学んだ、最期まで人間らしく生きる幸せを知ってもらおうと、ケアの方法を一つひとつ実践していました。
一方で永さんは、タレント業の傍ら、全国各地で奮闘する職人や市民活動家の方々との対話を続けていました。
 永さんはお父さんのご臨終をきっかけにホスピスケアに興味を持たれていて、後に私たちは共通の知人を介して対面しました。お会いした時、永さんは私の孤立し奮闘する立場を即座に理解され、以来、最大の応援団長になってくださいました。どちらからともなく、在宅ホスピスや看取りの輪を、二人で講演会をして全国へ広めようということになったのです。
講演での印象に残る永さんのお話を聞かせてください。
 私とご縁のある方々には、たんに体の健康維持だけでは、幸せを感じながら健やかに生きることは難しく、社会参加を通して仲間を作る力、死生観を確立する覚悟、勇気を出して行動する心の三つを加えて初めて幸せが実感できる」とお伝えしています。講演会で永さんがご自身のご家族を看取った話を披露された時、私は先の三つを看取りに生かされたのだと思いました。
 永さんは、実父や実母の看取りに立ち合いながら、ホスピスケアの勉強を続けました。そして、看取りの仲間作りやご家族の協力を得た結果、今から七年前に、住み慣れた自宅での奥さんの看取りを、勇気を持って選択できました。二人の娘さんが奥さんを抱きしめる姿を永さんも見守りながら、心臓の鼓動がなくなるまで、付きっきりで寄り添われたのです。「ありがとう」と言いながら最期を迎えた奥さんは、きっと幸せだったと思います。
            
 その体験から、「世間の情報を鵜呑みにせず、おかしいと思う気持ちを大切にして、自分の頭で考える、自分の足で仲間(ネットワーク)を作って発信する、自分を笑える余裕をもつ」ことの大切さを、笑いを交えながら教えてくださいました。
 笑いといえば、永さんはユーモアのセンスが抜群な方で、そのおかげで、講演会の場内は笑いが絶えませんでした。本書は、いわば、「医療漫談」 の収録集といってもいいかもしれません。永さんの、「人」を大事にして、言葉の力を最大限に生かし、平易な言葉で伝える姿勢を傍らで拝見できた私は、とても幸運だと思います。
 医師として、ふれあう相手をもっと勇気づけられるように、これからも永さんから学ばせていただきたいと思っています。
 情報が氾濫する現代社会において、自分の生き方に迷いが生じた時に、本書がお役に立てればと、切に願います。