エッセイ

富士見通りに立ち止まって、2007年始まる


実は山梨県にはたくさんの富士見通りがあります。地図に載っていなくても、富士山の見えるお気に入りの通りは、どこもその人にとって大切な“オンリーワンの富士見通り”なのです。
私にもあります。雪化粧の惚れ惚れする富士山の見える、私だけの小さな富士見通り。暮れに、地方テレビ局で私の仕事の様子が分かるドキュメント番組が、山梨県限定で1時間放送されました。それを見て頂いていれば分かるのですが、私の移動には自転車がよく登場します。ママチャリという愛称で呼ばれている、子供を後ろに乗せるタイプの自転車です。長男が19歳ですから、この自転車も我が家の歴史を刻んで古ぼけてきました。でも、もう少し私と共に歩んでもらうつもりです。
“いのち”のメッセージを伝える講演を通して、全国に心の通じる友人が出来たのは、大きな幸運のひとつです。そんな友人のひとりの、北海道の高橋さんから、『目を開けて、もっと私を見て』という詩が送られてきました。どうぞ、読んで下さい。こういう奇蹟を、老人施設で私も目の当たりにしたことがあります。“認知症”と呼ぶことは、私たちが断面的で、便利に扱いやすい評価を相手に与えることなのかもしれませんね。
~イギリス・ヨークシャー・アッシュルティ病院の老人病棟で起きた奇蹟~
アシュルティ病院の老人病棟で一人の老婦人が亡くなりました。
彼女の持ち物を調べていた看護婦さんが、彼女の遺品の中から
彼女が書いたと思われる詩を見つけました。 
彼女は重い認知症でした。
『目を開けて、もっと私を見て』
何が見えるの 看護婦さん あなたには何が見えるの
あなたが私を見る時 こう思っているんでしょう
気難しいおばあさん 利口じゃないし 日常生活もおぼつかなく
目をうつろにさまよわせて
食べものをボロボロこぼし 返事もしない
あなたが大声で「お願いだからやってみて」といっても
あなたのしていることに気づかないようで
いつもいつも靴下や靴をなくしてばかりいる
面白いのか 面白くないのか あなたの言うなりになっている
長い一日を埋めるためにお風呂をつかったり 食事をしたり
これがあなたが考えていること あなたが見ている事ではありませんか
でも目を開けてごらんなさい
看護婦さん あなたは私を見ていないのですよ
私が誰なのかおしえてあげましょう 
ここにじっと座っているこの私が 
あなたの命ずるままに起き上がる この私が誰なのか
私は10歳の子供でした。
父がいて 母がいて 兄弟・姉妹がいて 皆お互い愛し合っていました
16歳の少女は 足に羽をつけて 
もうすぐ恋人に会えることを夢みていました
20歳で もう花嫁 私の心は踊っていました
守ると約束した誓いを胸に刻んで
25歳で 私は子どもを産みました
その子は 私に安全で幸福な家庭をもとめたの
30歳 子どもはみるみる大きくなる
永遠に続くはずの絆で母子は互いに結ばれて
40歳 息子たちは成長し 行ってしまった
でも夫は傍にいて 私が悲しまないように見守ってくれました
50歳 もう一度赤ちゃんが膝の上で遊びました
私の愛する夫と私は再び子どもに会ったのです
暗い日々が訪れました 夫が死んだのです
先のことを考え 不安で震えました
息子達は皆自分の子どもを育てている最中でしたから・・・
それで私は 過ごしてきた年月と愛のことを考えました
いま私はおばあさんになりました
自然の女神は残酷です
老人をまるで馬鹿のように見せるのは 自然の女神の悪い冗談
体はボロボロ 優美さも気力も失せ
嘗てこころがあったところには 今では石ころがあるだけ
でも この古ぼけた肉体の残骸にはまだ少女が住んでいて
何度も何度も私の使い古しの心をふくらます
私は 喜びを思い出し 苦しみを思い出す
そして 人生をもう一度愛して生きなおす
年月は あまりにも短すぎ 
あまりににも速く過ぎてしまったと私は思うの
そして なにものも永遠ではないという厳しい現実を受け入れるのです
だから目を開けてよ 看護婦さん・・・目を開けてください
気難しいおばあさんではなく 「私」をもっと良く見て!



追伸:昨年感動した絵本「うちにあかちゃんがうまれるの」(ポプラ社)を紹介いたします。
文庫のあった日、3歳3ヶ月のさくらちゃんが本棚から一人で取り出して「読んで!」と、持ってきた本です。
ページをめくるごとに「かあちゃんのはもっとプール大きかったよ。」「スポンて、すずは<7ヶ月の妹>でてきたの」「さくらもおへそ切ったんだよ」、ポツリ、ポツリと語られるそのことばには命の誕生を体験したからこその、揺さぶられるものがありました。
『もう一回読んで」と3回ほど読まされました。早速居合わせたお母さん達に読んだところ、それぞれのお産の話に花が咲き、幸せがお部屋いっぱいに広がったことは言うまでもありません。
感動は響き合うんですよね。
更に、すずはちゃんの誕生で、つむじを曲げていた(お母さんから最近てにおえないと、相談を受けていた)さくらちゃんが、それ以来つき物が取れたように、もとのさくらちゃんに戻ったと言う後日談までつきました。
佐藤初女さんのお話にも出てきましたけれど、体験するって凄いですね。
(高橋様談)


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