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大人になるということ

「大人とは?」などと語る機会は今までなかったし、あらためてこの頃深く考えたこともなかった。しかし先日、確かに自分は大人になったんだ、と感じた瞬間があった。五十一歳にもなって、そんな自覚をするなんて不思議な話だ。


それは、往年の大ヒット映画「サタデーナイトフィーバー」を偶然にDVDで観た時のことだ。三十年前、ちょうど私も主人公のトニー(ジョン・トラボルタが演じている)と同じ二十歳前後で、家から離れて医学の勉強を始めていた。世界中でディスコフィーバーを起こしたという前評判の高いその映画を、わくわくして観に行った。
しかし、ビージーズの音楽も、アメリカの若者文化も、世界中の女の子が恋い焦がれたという噂の白いスーツのトニーのダンスにも、全くときめかなかったし、感動も覚えなかった。
私にとっては面白くなかった映画のひとつとして記憶に残った。
ところが、今観てみるとダンスにアイデンティティを求めるトニーの青春の厳しさと哀しさがずんずんと胸に迫ってくる。ダンスだって、歩き方だってかっこいいじゃないか。なぜ昔は分からなかったのだろう。そして、トラボルタの演技を裏打ちしている悲しさは、年上の最愛の女性を病気で失った直後だからと知った時に、その悲しみに共感する自分がいた。
大人になること。それは他人の悲しみや失うことの辛さや痛さを感じる心を持てることではないだろうか。だとしたら、私もそう軽薄な年月を積み重ねてきたのではなかったのだ、と少しほっとして、主題歌の「ステイン・アライブ」を明るい気持ちで何度も聞いている。
内藤いづみ
2008年4月16日 神戸新聞「随想」より抜粋


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