開催報告

伊勢赤十字病院での講演 2012年10月27日


三重県伊勢市。
柏木哲夫先生との伊勢赤十字病院にての“最高の一日、最良の最期”講演。
3年前に名古屋での“死の臨床研究会”での対談が、私と柏木先生との初めての直接的な出会いだった。
その時引き合わせて下さった辻村恭江先生が、その後も引き合わせて下さり、終わりよければ伊勢の会の協力も頂いて今回は4回目。
病院の新築、移転、緩和ケア病棟オープンの記念。
3回の対談が「最高の一日、最良の最期」(佼成出版)という本にまとまっている。

柏木先生は、日本で2番目に開設された淀川キリスト教病院のホスピス病棟の責任者として実践と啓蒙を30年前から全国に伝えて下さった方だ。
雲の上の偉大な先輩であるのと同時に、私がスコットランドで暮らした同じ時代、イギリスでのホスピスケアを学んだ方なので、密かに親近感を持っていた。
イギリスでホスピスを見学に行く度に、「柏木ドクターも来ましたよ。とても熱心でしたよ」と言われたものだ。
その先生と面と向かって出会うのに20年もかかったことになる。
しかし、聖書にもあるように「全ての出会いに時がある」

ホスピスケアから今や医療の世界では緩和ケアとして受け入れられ広がり、日本での緩和ケア病棟は200ヶ所になる。
柏木先生は日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団理事長。確かなるデータを示して下さった。
今回、ふたりの間で、ホスピスの話は詳しくしなかったが、終了後、大病院の緩和ケア科の専任者であるドクターから
「在宅ホスピスって何ですか?」
とまじめに聞かれて驚いた。
もちろん日本独自の造語ではあるが。
私と柏木先生にとってホスピスは、医療哲学のルーツでもあるから、「ホスピス」が死語にならないよう、やはり話の中で毎回きちんと押さようと思った。
ひょっとすると、ホスピスケアを知らない世代によって実践されている緩和ケアの現状がある。
何と言っても私は30年の集大成として、今年、ホスピスの歌までメロディー付きで作ったのだ。
とても素敵なメロディー(チャンティ作曲)である。

ホスピスの歌
ホスピスを学ぶということは

自分のいのち
相手のいのち
周りのいのち
自然のいのち
地球のいのち
星のいのち

すべてのいのちに向かい合い、
感謝することありがとう

柏木先生のお話では、2010年に日本の年間死亡は約120万人。
そのうちガン死35万人。病院84%、緩和ケア病棟8%、自宅7%、介護施設1%。
国が後押しをするのにも関わらず、自宅死はあまり増えていない。
増やすためには課題は何であろう?

先生は東北の震災後、ボランティアをした体験から次のようにまとめられた
直後 差し出す 技術を 上から 技術力
初期 支える 体を 下から 体力
中期 寄り添う 心に 横から 人間力
後期 背負う 魂を 全体で 宗教力

私たちの医療の現場では
救急 技術力 上から
一般 人間力・技術力 下から
ホスピスケア 人間力 寄り添う

治療期(励ます)→再発期(支える)→末期(寄り添う)

寄り添うということは人間力
逃げ出さず  空間を共にして  参加して  横に居る

7つの人間力
①受け入れる力 
②思いやる力 
③理解する力 
④耐える力 
⑤引き受ける力
⑥寛容な力 
⑦ユーモアの力

良き生
①感謝できる生
②ユーモアのある生
③散らす生(与える生)
何を散らすのか?
能力、経験、知識、技術、アイデア、思い財力

新しくピカピカで真っ白な病院での講演だった。
柏木先生は相変わらず若々しく、すっきりと寄り添い人の力を示して下さった。
色々な分野の医療が展開し、地域を支える大きな存在である伊勢赤十字病院の今後に期待する。

この地で寄り添い人が増えることを翌日の伊勢神宮での御祈りに加えた。