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明日への希望を持つヒント

PHP2020年4月号に記事が掲載されました。ぜひとも!書店でお買い求めの上、お読みくださいませ。

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私は人生の最終章であることを告げられた末期がんの患者さんや認知症の重い高齢者に
関かかわることの多い医者です。三十年以上、在宅での看取りをサポートしています。
いのちの最期に至るプロセスで、断末魔の苦しみにのたうち回ったり、家族が悲嘆にく
れ続けたり……そういう状況が多いのではないか、とよく尋たずねられます。
私の関わるケースでは、多くの場合それを乗り越えて平穏に生き抜いてくださいますが、苦しい状況のままの方々は一般的には少なくないと想像します。
PHP4月号記事
かつて、手の施ほどこしようがないほどの末期がんの苦痛で、「死んだ方がマシ。殺してくれ」と、家族と共に息も絶え絶えで私のもとへ「助けて」と手を伸ばしてきた方がいました。五十代の女性患者さんでした。
その方が三日後に笑顔で苺いちごのショートケーキを食べて、「美味いしい!」と家族と喜び合ったなんて、まるで作り話みたいに感じるかもしれません。それ以後「死にたい」とは一度も言いませんでした。明日への希望が湧いたのです。
重症のこの方が、どうやって笑顔を取戻したのか、お伝えしましょう。

①家族の諦めない心。どうにかしてあげたい、という強い気持ちを捨てない。
②末期がんの患者の苦痛を緩和できる医師の情報を得る。本物の知識は力です。
③行動に移す。医師を訪ねる。頼み込む。
ここまでは家族の努力。
ここからは私たちの努力です。
④体の苦痛の緩和に全力で務める。一刻の猶予もないのです。患者さんの苦痛に適した薬剤を選び、患者さんに合った方法で勇気を持って投与する。
⑤出会った縁を信じる。( 祈りに近い気持ちです)
こうして三日後に患者さんは彼女に合った鎮痛薬で苦痛から解放され、同時にご家族も
苦しみから救われたのでした。

自分のために自分をきれいにする
まず、痛みを和わらげ体を立て直すことで、心も同時にたくましく回復していきます。
食事が投げやりで貧しくなっていませんか? 豊かな食事とは必ずしもお金を掛けた贅沢なものを指しません。いのちの容物である体を大切に支える食事。温かいご飯を炊た
きましょう。
自分を作る六十兆の細胞に滋養を届ける食事を心してきちんと取りましょう。
体の痛いところを伸ばし、必要なら専門家にアドバイスをもらったり、セルフケアの知
識を得ましょう。できれば薬やサプリメントに頼たよりすぎるのを止めましょう。
体と心が回復してきたら、次に自分を大切にする方法は、自分を清潔にきれいにするケ
アです。
シャワーでなく、なるべくお風呂に浸かってください。温めると体の免疫力が高まりま
す。段々とパワーがついてきたら、ヘアスタイルなどおしゃれにも気持ちが向いてきま
す。そうしたら閉じていた世界は再び外に向かって開いていきます。
いのちの看取りを一緒にしている訪問看護師さんたちから、私はたくさんのことを教え
てもらいます。彼女たちは、末期の患者さんをきれいにすべく、優しく体を拭いたり、髪の毛をベッドの上で洗ったり、一番不潔になる部分もきれいにして清潔に保つように努めます。もうすぐ息を引き取りそうな人にでも変わらずケアします。なぜなら患者さんは〝今〟を生きる人だからです。
きれいに、清潔でいるということは、人間としての大切な尊厳のひとつなのです。自分で動けるあなた! 自分を大切にする第一歩です。
自分のために、自分をきれいにしましょう。

毎晩五つ「ありがとう」と感謝する
一年の間に、高齢のお父さんと、そしてそれに続いてお母さんを自宅で看取った娘さんがいます。とても細やかに介護をしていました。倒れたら困るなぁと私たちは心配していました。
「私は大丈夫です。一年半前から先生の『しあわせの13粒』という絵本の中にあった、幸せになるための十三カ条のひとつ、毎晩休む前にその日に起きた嬉しいことを五つあげ、『ありがとう』と感謝するというワークを実行しています。だから強くなりました」
お母さんを看取った後、その五つを私たちに見せてくださったのです(許可をいただい
て紹しょう介かいします)。

〈介護のありがとう 五つ〉
①両親を看取ることができて本当に良かった ありがとう
②ターミナルケアのお陰で穏やかに旅立つことができた ありがとう
③たくさんの方々に助けていただいて介護が続けられた ありがとう
④日々の暮らしの素晴しさがわかった ありがとう
⑤これからの下り坂 ポジティブ思考で進めそう ありがとう

人生には色々なことが起きます。
しかし、必ず苦しみも悲しみも通り抜ける時がきます。絆を大切に生きてください。
あなたの経験は、あなたの人生を厚くする大切な養分となります。未来のあなたは優し
く、強くなっています。それを信じて自分を大切に生きてください。