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「新・しあわせの13粒」その5

(JAフルーツ山梨「フルーツフル」、ドクターいづみのセルフケアエッセー vol.13より)

 人は心と体をもって生きています。そのバランスをうまく取ることが幸せに良く生きることの秘訣かもしれません。
 私の今回のアドバイスをどうぞ!
 よき新年をお迎え下さい。

『新・しあわせの13粒』9粒目 人のせいにはしない

 あるとき、看護学生から相談を受けました。「なぜか仲間はずれにされることが多い。
自分は人の悪口なんて言ったことはないのに、なんでこんな思いをしなければならないのか」と。
 私も経験あります。
甲府で在宅ホスピスをスタートした頃もそんな感じでした。自分が信じるべき道を進んでいるのに、周囲から誤解され、悪口まで言われてしまう。その悪口を私に教えてくれる人もいましたが、そういうときはシャットアウトします。そして悪口を言う人に近づかない。「聞きたくないの」とはっきり言って、そういう言葉を耳にいれません。
 そして絶対味方だと思う人に、一度だけ愚痴をこぼして(学校の友だちじゃなくていいんです)、少しすっきりして、寝てしまうのがいいかもしれませんね。ポイントは切り替えること。嫌なことはきれいに捨てること。
「あの人がこう言ったから、私にはできない」
「あの人の行動が私の予定を狂わせた」と、他人のせいにして自分の計画をやめてしまうことは簡単かもしれません。でも他人に振り回されては自分の人生がもったいないと思いませんか。
 私の知り合いで、ずっとひとり暮らしをしている87歳の女性がいます。甲府の下町の古い小さなお家にお住まいですが、難病があり、歩行もやっとで、言葉も聴きづらい。身内も少なく、ほぼ天涯孤独らしい。言葉にならない苦労があったはずなのに出会ってからここ十年、一度も愚痴を聴いたことがありません。最小限のことをヘルパーさんに依頼していますが、自分の身の回りのことは自分でなんとかやり遂げています。一回だけ、寒い冬に施設に入ったことはありましたが、すぐに出て来てしまいました。
自立心が強い方なので、親切な介助もなんだかかえって力を奪われるようで嫌になったのかもしれません。
「なるべく長く、この家で暮らせればしあわせなんです」
 普通ではとてもできそうもないひとり暮らしを続けているというのに、どんな状況も在るがままに受け入れて、自然体で生きているのです。自分の人生を自分の責任で、自分らしく生きる姿を見て、尊敬の念を抱いています。