別れ

夜中に、枕元の携帯電話が鳴った。
何人か重症の患者さんがいるので、すぐに眠気を払って電話を手に取った。
ああ、あの人だ、とずしんと胸に来た。

花
患者さんではなく、個人的に20年以上お付き合いがあり、遠隔で私のしごとを手伝ってくれた人の訃報がご主人から届いたのだった。
この一週間ほど、予感があった。
この数年、気丈に病いと向かい合ってきた人だった。
「病気は受け入れる、だけど入院すると一気に心身とも病人になってしまって嫌。なるべく家にいていつもの家事と、先生からの仕事をするのが幸せ」
そう言って、うまく治療と仕事を続けていた。
7月まで頑張って私の仕事をしてくれた。
行く末を見極めたのか、「これでお終いです」と、きちんと仕事の始末を自分でつけた。

見事だった。
まだ、50歳。
病とと共に、自分らしく生き切るのは簡単ではない。
支えてくれるパートナーがそばにいて、きっと、きっと、「ありがとう、頑張れた」
そう言って彼女は旅たったと、私は信じる。