命の終わり 日常の先に
山梨日日新聞5月24日より

内藤いづみ医師 シスターと対談本
在宅ホスピス医で甲府・ふじ内科クリニック院長の内藤いづみさんが、国際コミュニオン学会名誉会長で、聖心会のシスター鈴木秀子さんを迎え、対談した内容をまとめた「世界で一番小さな命の本」が刊行された。医師と宗教家、それぞれの立場から人の命に寄り添ってきた2人が、生の終わりが見えたときにどのように最期を迎えていくのか語り合った。
終末医療の進歩により、肉体的な苦痛のコントロールが可能となった。ただ、内藤さんは「体の痛みを緩和した後にどうしようもない心の痛みが来る。その解決策を探り、生きてて良かったという境地に至るようにお手伝いするのは楽ではない」と話す。
対談では、死を目前にした時の「魂の苦しみ」を乗り越える方法を鈴木さんに問いかける。死は忌み避けるものではなく、日常の続きにある「人生の仕上げ」と語る鈴木さん。さまざまな選択肢がある中でも納得して死を迎える準備をする必要性を説く。
普通の旅路
内藤さんが母親の冨士丸さんをみとった経験もつづった。冨士丸さんの希望で特別養護老人ホームが最期を迎える「家」となったが、施設の個室で2人きりになった時に感じた不安と恐怖を吐露する。赤ちゃんの泣き声や生活音が聞こえる所には命のエネルギーが循環する。「命の流れがある場所にいれば、みとる方も逝く方も恐怖や孤独に取りつかれない」と、家庭で最期を迎える意義を語る。
本書は、内藤さんがみとった「普通の人、普通のサポートによる普通の旅路」の記録から命を見つめた。「みんな聖人になったわけでもなく、悟りが開けたわけでもない」というように、日常の続きとして死を迎える様子をありのままにつづった。
自分らしく
自分らしく人生を締めくくるためには、「命を支えてくれる人が必要」と内藤さん。患者とその家族、そして医療スタッフを含め、「誰か一人が抱えるのではなく、気持ちをシェアして支え合う。みんな命をみとる仲間です」と語った。
風来舎刊、1650円。県内ではBOOKパーク塩部店、朗月堂書店、柳正堂書店、くまざわ書店で販売している。
思いをシェア、皆でみとる
著書の翻訳版 韓国で話題呼ぶ 在宅ケア巡る議論に一石
内藤いづみさんの著書「死ぬときに後悔しない生き方」(綜合法令出版・2019年)の翻訳版が4月、韓国で刊行され、話題を呼んでいる。メディアでも大きく取り上げられ、病院中心の医療が展開される韓国で、在宅ホスピスケアを巡る議論に一石を投じている。
内藤さんによると、韓国の医療水準は日本と同等であるものの、在宅ケアでのみとりについては日本ほど理解が進んでいない。かつて日本がそうだったように、死をタブー視する認識が根強いという。
こうした中、昨年内藤さんの在宅ケアの臨床現場を密着取材したドキュメンタリーが報道された。「死は避けるもの、忌み嫌われるものとされてきた中で、カルチャーショックだったと思う」と内藤さん。朝鮮日報のインタビュー記事掲載などの後押しもあり、初版が売り切れ、増刷されるなど大きな反響を呼んだ。
今月27日には、韓国ソウル市内で講演する。「韓国でも在宅ホスピスケアを成功させたいなら、安全に自宅での痛みの緩和ができる知識、技術、心を持った人材の養成が必要。医師として経験や、積み重ねてきた取り組みを伝えたい」と話している。
