エッセイ

元旦の食事会


今年の元旦も、六郷の実家に集まり、八十四歳の母を中心に一家の幸せを祈りつつ、山海の珍味に舌鼓を打った。私のところの三人と、弟のところの三人の子供が集まり、にぎやかだった。食事の後、私の運動不足を心配する夫に手を引かれ、日向山の仏舎利塔に登ることになった。その道すがら、私達の目の前を美しいブルーの鳥、かわせみが一瞬のうちに飛び去っていた。英語では、キングフィッシャと呼ぶ。自然あふれる地域で働いている弟より次の一文が寄せられた。
毎年恒例となった、内藤家の元旦の食事会。
市川三郷町の実家では、この日のために暮れから支度に忙しい。
実家の家族と、いづみの家族の全員が揃うのは1年でもこの日くらいしかない。
今年は、風邪をこじらせた人がいたり、受験生がいたりでいつもよりお酒と料理がはかどらなかった。
それでも、楽しく飲んで、酔い覚ましに、近くの公園に散歩に行こうということになった。
実家の裏には富士川の支流で「山田川」というが川が流れている。公園は山田川沿いの小高い山の中腹にある。
昭和30年代の山田川には、ウグイが産卵で遡上したり、ウナギ捕れたりしたらしい。
今の山田川は両岸をコンクリートブロックで護岸され、生活雑排水がじゃかじゃか流されている排水路みたいな小川だ。
町が下水の建設を進め10年。ぼつぼつその成果が出たのか、2年ほど前から6月にホタルが飛ぶようになった。
山田川沿いを歩きながら「今朝の散歩の時には、葦原にメジロが群れでいたよ」
「時々、カワセミも飛んでいるよ」という小学4年生のことばにみんなが川の中を注目した。
まさにそのとき、カワセミが、上流から下流に向かって一直線に飛翔し、ちょこんと葦の枝にとまった。
青緑の背中。オレンジの胸。「きれい!」「すげー」感嘆の声。
数秒その姿を見せてくれたカワセミは、スーっと下流に飛び去った。
「今度はホタルを見に来てね」
自然の回復力と造形の天才ぶりに感動した元旦だった。
(文章 内藤 力)
画像は村岡@大津様の野鳥図鑑(野鳥写真集)より