今日のつぶやき

3月11日

この日が来るたびに、みなさんが思い浮かべることは何でしょうか?
被災された方々、大切な方を失った方々、特に福島の方々。どんな思いなのか、安易な慰めの言葉は見つかりません。

山梨県は大きな被害はありませんでした。
しかし私の子供の1人は千葉県で学んでおり、千葉の揺れは大きく、電車は止まって、帰省ができませんでした。交通網は混乱していました。
私はこの子のことは、ことさら愚かな心配症の親になり、この時はパニックになりそうに。
大きな被害と悲しみ、驚き、辛さにさらされている被災地の皆さんに申し訳ないと思いつつ。
高速道路は余震で断続的に通行止めに。子供の不安も募ってきました。
柏にいる知り合いの看護師さんに様子を見てもらおうか、と電話したら通じました。
先生、救助します。中央高速道路のどこかで引き渡します、彼女はそう言ってくれたのです。
私はその言葉に甘えました。

夫と車で甲府を出発。余震を怖れつつ高速道路を進みました。
日ごろ、沈着冷静な夫は出口を間違えました。彼もかなりパニックだったのだと思います。
やっと、サービスエリアで出会えました。彼女には小学生の娘さんがいて同乗していました。
この子にも危ない目に会わせたと、私たちの利己主義を恥ずかしく思いました。
その看護師さんは口にださなっかたけれど、先生、何があっても私は娘と一緒にいます。先生も同じ思いでしょう?パニックの先生も人間らしくて、なかなかいいですね!
そう励まされた気がしました。本当に感謝しました。

娘さんは金柑がその時大好きで、車内で食べて、種を数えては楽しんでいたとか。車内から柑橘系の芳しい香りがしました。
先生もどうぞ!と一つ渡してくださいました。私は口に放り込み、香しさに我を取り戻しました。
その味は一生忘れないでしょう。

我が家ではメンバーが全員揃い、計画停電で暗い中、卓上で夕飯の素朴な鍋を囲み静かに食べました。
私は暗いことをいいことに、泣きました。

それから、金柑の季節になると私たちを救ってくれた母娘のことを必ず思い出します。感謝とともに。
その看護師さんは人生の最大の困難と課題にぶちあたった患者さんを、支える在宅看護に取り組んでいます。
患者さんとの別れの運命は避けられないけれど、彼女に出会った方々はどんなに幸せかと、私は知っています。彼女は優しく、たくましく、美しい救助者なんです。

今日は冥福を祈る日。
自分たちの幸せに感謝する日。
暗さを味わう日。
人間のごう慢さを振り返り、反省する日。
金柑を味わいながら、みんなの幸せを祈る私の特別の日。