往復書簡

初心者のためのワインQ&A(Vol.3 復)

 ~いづみさんへ~
返事が遅くなってすみません。仕事がら黄金週間は、たくさんの観光客を迎える関係で休みなくあわただしく過ごしていました。私の住む北国でもやはり桜の便りは早く、ツツジとほぼ同時に咲き始め、それを囲むようにカラフルな芝桜と白いコブシの花が彩りを添えています。例年だと、花の咲く順番を待ちながら春を楽しむのですが、今年は少し違うようです。


さて、今回は「ブドウの作り方を含め、ビオワイン」についての質問ですが、なかなか難しく、また、複雑な問題を含んでいるので、少し回答に時間がかかってしまいました。
 ビオワイン?
まだあまり聞きなれない言葉ですが、化学肥料や化学農薬を使わない有機農法で造られたワインのことで、ビオロジックワインやビオディナミワインとも呼ばれています。
ビオディナミ(フランス語)は、さらに地球と天体の運行の法則を合体させてブドウ栽培管理を目指しています。
日本ではまだ実践しているワイナリーも少ないのですが、そんな中、山梨の金井醸造さんのワインに出会えたことは、大変有意義で貴重な体験になったことだと思います。
実は、金井さんとは1999年11月にミラノで開かれた醸造・栽培機械展訪問ツアーのメンバーとして一緒にイタリアを旅行しました。
その時訪れたワイナリーで有機農法によるワインを紹介されましたが、日本よりもワイン法が進んでいて、自己の有機農法取組宣言や申告だけではなく第3者による検証システムも整備されていました。
 ブドウに限らず作物をつくるのに肥料や農薬を使いますが、肥料としては堆肥のような有機肥料が望ましい訳ですし、農薬はできるだけ使用を少なくするか(減農薬、低農薬)、できれば全く使わない(無農薬)方がよいはずです。
農薬に頼らず健全なブドウを収穫するためには、特に土づくりが重要ですし、さらに病害虫に強い栽培環境を作ってやらなければなりません。
 しかし、日本はヨーロッパのワイン産地と比較すると雨が多く、特に高温多湿の気象条件はブドウに多くの病気を誘発したり、ブドウ樹周りの雑草の生育を盛んにします。このためブドウ生産者は天候を気にしながら防除しなければなりません。
防除には、病気を引き起こすカビやウィルスの殺菌剤や虫除けの殺虫剤、さらに雑草への除草剤散布などがあります。
 日本の中でも北海道などは冷涼で比較的乾燥した天候であるため、本州に比べ農薬の散布回数が少なくエコファーマー※1に認定される農家もあります。
また、一人あたりの管理面積が少なかったり、ブドウの栽培管理を毎日のように専業に行える農家では、殺虫剤を使わずに虫寄せを置いたり、ごく普通に農薬を使わずにブドウを生産しているところもあります。
しかし、その数は少数で多くのブドウ生産者は必要に応じて農薬を使い、健全な果実を作り出しているのです。
 ワインメーカー側は、減農薬、無農薬を望みますが、ブドウ農家は健全なブドウを納入しなければ収入を得られないために、農薬を使いたがる傾向にあります。難しいバランスだと思います。
 ここで注目すべきことは、ワインの品質を向上させるために、ブドウの質を上げようと自然の力を大切にし、土づくり、無農薬、有機農法に努力しているビオディナミの取り組みがあると言うことです。
 これからのブドウ作りは減農薬、有機栽培に向かっていきますが、全てがビオワインになるとは限りません。ワイン造りのひとつのスタイルであり、自然農法の取り組みに存在価値があります。
また、農薬を使っているから全て健康に良くないワインだとは考えないほうが良いと思います。近年ポジティブリスト制度※2の導入もあり、農薬管理に対する意識がたいへん高まっていますし、農薬の使用基準をしっかり守り、適法なワインであることのデータ管理は、当たり前の条件になっています。
でも、ビオディナミによるブドウの栽培管理に、土の働きや星の動きも関係してくるとなると神秘的で、ワインがますますロマンティックなものに思えてきますね!
 ※1.エコファーマー:土づくり、減化学肥料、減化学農薬に取り組む農業者
 ※2.ポジティブリスト制度:基準が設定されていない農薬等が一定量以上含まれる食品の流通を原則禁止する制度
 さて、ブドウの仕立て方として、①平棚仕立て、②垣根仕立て、③棒仕立てがありますが、ここでは、北海道で行われている垣根栽培で育つブドウの四季を一般的な作業内容で紹介します。
【春】
棚直し・・・冬の間に緩んだブドウ棚の針金を張り直し.
誘引・・・前年までに伸びたブドウ樹の支梢を針金に固定.
萌芽・展葉・・・ブドウの芽吹き、新梢の伸び.
土壌改良・・・トラクターで石灰を散布し、酸性土壌を改良する.
防除・・・芽の先端に隠れている害虫の発生を防ぐ.
【夏】
芽欠き・・・込み合っている芽や新梢の葉の付け根から生えているわき芽(副梢)を取り除き、風通し・日当たりをよくして病害虫の発生を軽減.
摘芯・・・栄養分を余計な部分に使わないため、新梢を約1.5mにして先端を切り落とす.
草取り・・・トラクターや刈り払い機、穂鎌による草刈りで、養分の競合を避ける.
防除・・・病気の予防、コガネムシの大量発生を防ぐ.
【秋】
除葉・・・ブドウの房周りの葉を取り除き、風通し・日当たりをよくして病害虫を抑制.
収穫・・・酸度の減少と糖度の上昇のバランスを判断して適熟に収穫.
施肥・・・収穫後、肥料の分解と吸収に時間がかかるため、秋に施す.
【冬】
剪定・・・枝を合理的に配置することによって空間の無駄をなくし、また,成り過ぎを防止し、品質のよい果実の安定収穫を目指す.
ところでニューズウィーク誌の記事は面白い実験の結果を発表していますね!
価格の高いワインは、価格の低いワインよりも美味しいはずだという、人間の先入観によって物事の本質を見抜けなくなってしまった例ですね。ワインのテイスティング(試飲)においてあらかじめ情報を与えておいて、熟成年数、品種特性、醸造方法などの表現力が適正かどうか評価する場合と、情報を全く伏せて行う場合(ブラインドテイスティング)があります。
ブラインドで試飲を行う場合は先入観が入らないので、品質に対して正直な結果を出せると思いますが、少々肩苦しい雰囲気にもなるので、ラベルなどの情報を楽しみながらワインを飲む方をお勧め
します。


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