往復書簡

初心者のためのワインQ&A(Vol.2 復)

~いづみさんへ~
山梨ではもう桜が咲き始めているのでしょうね。私の住む北国では、先週末の日中の暖かい日差しで福寿草の黄色い蕾が開き始めました。今年は春の訪れが早そうな予感がします。
しかし、あまり早くブドウの芽が動き出してしまうと、遅霜が心配となってきますから、喜んでばかりはいられません。


さて、Q&Aの回答です。
Q1 ラベルの分析を教えてください。
フランスワインに遭遇することが多いので、まずはフランスワインで教えてもらいたいのです。フランス語がひとつの壁になってしまうでしょうか?外国産のワインのラベルを見せられても、まず分かりません。シャルドネ、メルロー、リースリング、カベルネ、とは何でしょうか?
(回答)ワインを好きな人ならば誰もが憧れる国の第1位はフランスだと思います。
そのフランスワインのことがラベルを通して少しでも分かるようになるととても楽しい気持ちになります。最初は少し戸惑うかも知れませんが、でも安心してください。
フランスはワインに関する法律がしっかりしているので、表現方法がパターン化されています。
フランス語といっても、その決まった表現方法から主に地名や畑名を読み取ることになるので、フランス語が壁となるより、地理の勉強感覚で町や村の名前といっしょにワインを覚えることができます。
1997年に私が訪れた有名なワイナリーのラベル表現を例に取って説明します。
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ここで一番重要な情報は、⑩の原産地呼称名Appellation d’Origine Controle(AOC)で、d’Origineのところにブドウの産地名である⑥PAUILLAC(ポ-イヤック)という町名が表示されていることです。
AOCに記載される産地名が日本の県名、郡名、町村名へというように、狭く限定される程、上級ワインになります。
ワイン名は④シャトー・ラトゥールと言いフランスの5大シャトーワインのひとつに数えられています。
このワインのブドウ産地名を正確に表現すると、
国名:FRANCE(フランス)
地方名:BORDEAUX(ボルドー)
郡名:MEDOC(メドック)
町名:PAUILAC(ポーイヤック)
となりますが、日本のブドウ産地である勝沼が山梨県にあるのが分かるように、さらに山梨県が関東・甲信越地方にあるのが分かるように、限定された産地名をラベルに入れると、それより広い地域名は当然のように記載されないことになります。
ちなみに、①は原産国、②はシャトーで瓶詰め、③はワイン名の強調表示、⑤は格付、⑦はアルコール度数、⑧はブドウの収穫年、⑨は容量を表しています。
 フランスのワイン産地は、主要なもので14の地方があり、各地方がさらに細かくAOCで規定されているので、全部覚えるのは大変かも知れません。
しかし、たとえばフランス食品振興会SOPEXA(ソペクサ)のワインマップを参考にワインを購入したり、地図と一緒にフランスワインを学ぶと旅人の気分を味わうことができるのではないでしょうか。
フランスワインの長い歴史の中で、各地域によって栽培されているブドウ品種には違いがあり、ボルドーやブルゴーニュといった地名をヒントにブドウの名前が頭に浮かぶようになると、ワインのタイプも自然と創造できるようになってきます。
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シャトー・ラトゥールというワインは、カベルネ・ソーヴィニヨンというブドウ品種を主体に4種類のブドウから造られていますが、ラベルにはブドウ品種名が記載されていません。
そうなんですフランスワインの多くは、単一ブドウ品種で造られていても品種名を表示していないのです。一方、アメリカやオーストラリアのワインには、シャルドネ、メルロー、リースリング(右写真)、カベルネ・ソーヴィニヨンといったブドウ品種をラベルに記載したものが多数見受けられます。


Q2 ワインの歴史。
ワインの味はぶどうで決まるわけですが、世界中でこれだけワインが作られているということは、ぶどう作りがまず広がった、ということですよね。
大昔、ぶどうの病気が広まり、その時はほとんどのぶどうは壊滅的な打撃を受けた、と聞いたことがあります。その昔、ギリシャやローマで飲まれていた味と今の味とでは違うのですか?
(回答)ブドウは世界中で一番生産量が多い果物です。
そして、現在栽培されているブドウの祖先の出現は、約6000万年前であることが種子の化石などから分かっています。
ブドウの果皮表面には野生の酵母(微生物)が存在し、ブドウ果汁の糖分を簡単にアルコールに変えてしまう(発酵)ため、ワインの歴史の中で葡萄酒を造ったと考えるよりも、ブドウからワインが初めて出来たと考える方が自然のようです。
ワインが初めて人間によって造られたのは、今から約1万年と推定されています。そして、ギリシャやローマ時代なると醸造技術が革新的に発達していき、今日のワイン製造技術の基礎が出来上がりました。当時のワインは、主に水割りで飲まれ、時には果汁や蜂蜜を混ぜたカクテルとして飲まれていたようです。
赤ワインや白ワインと言った分けた仕込み方は、15~16世紀になってからですし、コルクやガラスビンの登場は17世紀以降なので、昔のワインをストレートで飲んだら、その保存方法から少し酸化ぎみの味がしたかも知れませんね。
19世紀になると、品質面でも流通性の面からもかなりの進歩を遂げましたが、19世紀後半になって、ワインの歴史上でとても大きな出来事が起こりました。
それは、フィロキセラ(ブドウ根アブラムシ)という病害虫によってヨーロッパのブドウが壊滅状態になる打撃でした。
この危機を救ったが、フィロキセラに耐病性をもつアメリカのブドウ台木にヨーロッパのブドウ樹を接ぎ木する方法でした。
確かにそれまでの純粋のブドウ苗木とは違いますが収穫される果実はヨーロッパのワイン用ブドウの性質を引き継ぐことが出来ました。


Q3 今、山梨や長野ではどんなぶどうを栽培しているのでしょうか?
赤ワインと白ワインは違うぶどうから作られるのですか?
マスカットベリーA
(回答)山梨の代表的なブドウ品種は白ブドウの甲州、赤ブドウのマスカット・ベリーA(右写真)ですが、そのほかにもヨーロッパのワイン専用種であるシャルドネ、メルロー、カベルネ・ソーヴィニヨンなどがあります。
長野では、白ブドウ品種のシャルドネと、赤ブドウ品種のメルローが有名ですが、同じ赤ブドウ品種のカベルネ・ソーヴィニヨンやアメリカ系品種のコンコードなども栽培されています。
さて、白ワインと赤ワインの一般的な製造方法の違いですが、使用するブドウの種類が違います。白ワインは果皮が緑色か薄いピンク色のブドウ品種(例;シャルドネ)、赤ワインは果皮の黒い品種(例;メルロー)を使います。まず初めに、梗を取り除き破砕します。
次に白ワインの場合すぐ圧搾し、得られた果汁を発酵させますが、赤ワインの場合は皮・種・果汁を一緒の状態で発酵させ、果皮から十分に赤い色素を抽出させてから圧搾します。
ブドウの赤い色素は果皮についているので(例外もありますが)、うまく果皮だけを取って発酵させることができたら、黒いブドウから白いワインができることになります。
でも作業性が悪く現実的ではありません。


Q4 普通の食事に合う外国産ワインを赤・白3本ずつ教えてください。
(回答)今回は、フランス産の白ワインから紹介したいと思います。
1本目は、柑橘系の風味で有名なサンセールの白ワインです。
特に、白身魚との相性がよく、さっぱりしたワインの代表格です。使われているブドウ品種は、ソーヴィニヨン・ブランで、日本人なら誰でもすぐに好きになれるパッションフルーツ系の香りと味わいを持ったワインです。
La Vigne Blanche SANCERRE 2006 HENRI BOURGEOIS 750ml
ラ・ヴィーニュ・ブランシュ サンセール 2006  アンリ・ブルジョワ

※AOCはサンセール(ロワール地方)、生産者は有名な造り手のアンリ・ブルジョワ
同じワインが購入できなければ、優先順位として①サンセール、②アンリ・ブルジョワ、③ヴィンテージ(収穫年)の順に選択してください。一般的に収穫年の若いものが低価格です。

%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AB%E3%83%89%E3%83%8D.jpg2本目は、「かきしゃぶ」こと牡蠣に合う白ワインで有名なシャブリです。
ワインを飲まない人でもシャブリの名前だけは聞いたことがあると思います。
そんなシャブリの中から、私が1997年に訪問したラ・シャブリジェンヌを紹介します。
La Chablisienne 2006 CHABLIS PREMIER CRU VAILLONS 750ml
ラ・シャブリジェンヌ 2006 シャブリ・プルミエ・クリュ  ヴァイヨン

※AOCはシャブリ・プルミエ・クリュ(ブルゴーニュ地方シャブリ)、生産者は協同組合のラ・シャブリジェンヌ、ブドウ畑名はヴァイヨン。ブドウ品種はシャルドネ(右写真)です。
やはり同じワインが購入できなければ、優先順位として①シャブリ・プルミエ・クリュ、②ラ・シャブリジェンヌ、③ヴィンテージ(収穫年)の順に選択してください。
実はシャブリのAOCには4つのクラスがあり、プチ・シャブリ、シャブリ、シャブリ・プルミエ・クリュ(1級畑)、グラン・クリュ(特級畑)と呼ばれていますが、これに畑の名前や造り手が加わるとかなりの数となって、どのシャブリを選んだら良いか分からなくなってしまいます。
しかし、この中でもシャブリ・プルミエ・クリュ(1級畑)のものならば、シャブリらしさを味わうことができると思います。
3本目は、フランスでも北に位置するアルザス地方の白ワインを紹介します。
アルザス地方は地理的にドイツに近いこともあり、ワインのビンも細身でドイツタイプ、ブドウ品種もドイツワインでよく知られています。そんな中からたいへん個性的な香りを持つゲヴェルツトラミナーというブドウ品種から造られたワインが有名です。
フランスワインとしては例外的に、ブドウ品種名がラベルに記載されています。このワインは、中華料理との相性が良いと言われています。
ALSACE GEWURZTRAMINER 2006 HUGEL 750ml
アルザス  ゲヴェルツトラミナー  2006 ヒューゲル

 ※AOCはアルザス、生産者はアルザスワインの代表的な造り手であるヒューゲル。ヴィンテージ(収穫年)にこだわらなければ、手に入りやすいワインです。


次にフランスの赤ワインです。正直言ってあまりにも沢山ありすぎて迷ってしまいますが、
1本目は、ブルゴーニュの赤ワイン。偉大で高価なワインも産出するブルゴーニュ地方の中からブドウ栽培地を狭めて限定しなければ、手頃な価格のワインに出会うこともあります。
ブルゴーニュの赤ワインと言えば、使用しているブドウ品種はピノ・ノワールです。
BOURGOGNE PINOT NOIR La Vignee 2006 Bouchard Pere & Fils 750ml
ブルゴーニュ   ピノ・ノワール ラ・ヴィニェ 2006  ブシャール・ペール・エ・フィス

※AOCはブルゴーニュ、生産者はブルゴーニュを代表するブシャール・ペール・エ・フィスですので、このAOC以外のワインは値段が高くなるので注意してください。
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2本目は、ボルドー地方オー・メドックのシャトー・シトランという赤ワインです。ボルドーのワインも生産地によって大きく値段が違ってきますが、このワインは手ごろな価格が付いています。使用しているブドウ品種は、カベルネ・ソーヴィニヨンとメルロー(右写真)です。
Chateau CITRAN 2003 HAUT-MEDOC 750ml
シャトー  シトラン 2003  オー・メドック

※AOCはオー・メドック、生産者はシャトー・シトラン
3本目は、ロワール地方の赤ワインで有名なシノンです。
使用しているブドウはカベルネフランという品種ですが、樹齢50年という古い樹で収穫されたブドウから造られています。樹が古くなるとあまり果実を付けなくなる分だけ凝縮されたブドウが採れます。
CHINON Vieilles Vignes 2004 PHILIPPE ALLIET 750ml
シノン ヴィエイユ・ヴィーニュ 2004 フィリップ・アリエ
※AOCはシノン、生産者はフィリップ・アリエ
前回の紹介した山梨のワインは、すべて取り寄せることが出来て何よりです。
今回もうまくいくと良いのですが・・・
*写真:山梨県ワインセンター小冊子より


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