往復書簡

レイチェル・カーソンについてお話を Vol.2(復)

川村まさみ様との往復書簡、第ニ回目の復路です。


川村さんへ
お忙しいところお便り有難うございました。
一気に暖かい日が訪れて、縮こまった体が伸びますね。
あなたのすてきな文章で伝わる「レーチェル・カーソン」の静かで力強い生き方が、たくさんの読者にズシンと重い感動を与えてくれました。私自身、読んでいて鳥肌が立ちました。もう一度「レーチェル」を読み返しています。
世界中で対温暖化のニュースが話題にならない日はありません。レーチェルの発言の意味は日増しに重くなります。真剣に考えると、未来を生きる意欲さえ失ってしまうほど、危うい地球環境の真実の姿。無限に重なり合ういのちの連鎖の中にある人間が、これほど後先もなく欲望を広げ、多くのいのちの未来を犠牲にして得られた快適なライフスタイルを、あなたとの書簡は自覚させて下さいました。とにかく、消費にすぐに走らず我慢することを自分も反省しました。質素に暮らすことを私たち大人が思い出さなくては、と決心させてくれました。
私は昭和31年生まれです。幼い頃、我が家にはかまどがあったんですよ。信じられますか?朝起きると、母が既に朝の支度を終えて、パチパチと台所では火が燃え、冬ならコタツは炭で温かくなっていました。同世代の日本人なら皆同じ体験があるはずです。甲府盆地は昔は今よりずっと冬中空っ風が吹き荒れて寒かったです。
中学高校と、田舎から甲府へ往復2時間掛けて電車通学していたのですが、今となるとその辛さをあまり覚えていません。かなり寒かったと思います。ほっぺを真っ赤にして、駅から学校へ自転車を漕ぐ私を想像してみて(笑)。
しかしながら、「私たちの世代は昔を思い出して頑張れる!」とは簡単には言えません。苦労を体験してきた84歳の戦前派の母でさえ、クーラーや暖房の恩恵に慣らされると、もう昔に戻ろうとは思わないようですもの。
「あぁ、快適だ。あぁ、極楽だ。」と嬉しそうです。
自分も含めて、楽なこと、快適なことが大好きな人間たちのこの性分をどうしたらいいのか、と深く悩みます。ひとつだけ思うのは、他のいのちと繋がる場面を各々が確保するということしかないのかなと。
子育てはもちろん大切ないのちの繋がりの働きです。私のしている在宅ホスピスケアもそのひとつの現場です。
文学少女だった私は、10歳頃からずっと作文を書いてきました。10歳で山梨県1位の作文の大賞をもらったのは、“若草物語を読んで”でした。4姉妹の中のジョーのボーイッシュな自立した美しさと元気さに憧れました。早熟だったのかしら?そして今は、折々のエッセーを発表する機会がいくつか与えられています。
人間の歴史の大きな流れを変える、などという大それたことを考えたことはないけれど、少なくともこの社会を構成するひとりひとりの人間が、他者との関わりの中で生かされていることに思いを馳せてもらえるように書いていけたら幸せです。
蝶の一生も、猫の一生も、植物の一生も、人間の一生も、与えられたライフサイクルで儚くあっという間ですが、そのきらめきの一瞬に心を澄ませて目を留めていきたいです。
同じホームページ上で、スピリチュアルケアについて書簡を交わして下さっている井上ウィマラさんは、仏教のヴィパッサナー瞑想の先生でもあります。同じ流派のスマナサーラ長老のお書きになった教科書の「慈悲の瞑想」の一部を紹介します。心の中でも、声を出してもよいので、静かに唱えるとよいそうで
す。
「私は幸せでありますように
 私の悩み苦しみがなくなりますように
 私の願い事が叶えられますように
 私の親しい人々が幸せでありますように
 生きとし生けるものが幸せでありますように」
この瞑想については、井上ウィマラさんに次回詳しく伺ってみますね。
全てのいのちが幸せで生きることがどうすれば可能なのかしら?
では、本当に今回はありがとうございました。
東京で必ず再会いたしましょう!
永遠にあなたの友である いづみより


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