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井上ウィマラ・内藤いづみ往復書簡Vol.5(復)

井上ウィマラさんとの往復書簡、今回は内藤いづみ先生からの書簡です。

ウィマラさんへ

私が迅速にお便りできず、時々間が空いてしまいましたが、お忙しい中書簡の交換を続けて下さりありがとうございました。今回がひとまず最後の書簡になります。

私が迅速にお便りできなかったのにはいくつか言い訳があって、色々な仕事を同時にこなしている、という物理的な時間の無さも大きな理由のひとつでした。
在宅ホスピスケアという、川の流れに沿うように、いのちの流れに自然に寄り添うホスピスケアを行うためには、いのちに対する豊かな感性を養うのと同時に、医療的な技術も知識も必要です。
そして、仕事を続けるための体力と気力。
25年経って私もやっと、あまり相手に緊張感を与えずに、全力で向かい合えるようになりました。
一昨日は、子供の大学入学式の日でした。朝3時半に緊急コールが入り、暗い夜道を往診に出かけました。初めていのちの看取りを体験する家族は緊張しています。

私のすることは、本人が苦痛なくいられるようにすること。そして、本人と家族を「大丈夫ですから。」と励ますことです。
85歳の患者さんは、苦痛の様子はなく、表情は落ち着いていました。しかし、もはや血圧は測定できないほど低くなっていたので、危篤であることを家族に伝えました。
不思議なことに、はっきりと意識はありましたから、私が「よく頑張りましたね。」と言うと、静かに頷いて下さいました。それから2時間後、眠るように安らかに亡くなったのです。本人の希望通り、家で看取れたことを、家族と私たちは幸せに思いました。その後、私は慌てて支度をして、東京へ子供の入学式のために出かけたのです。

もし、仕事が長引けば、「ごめんね。」と子供に謝って式は欠席になったでしょう。子供と夫は「ああ、またか。」と残念に思うか、「仕方ないなあ。」と諦めてくれたかもしれません。ずっとそんな思いを家族に味わせながら、20年間、我儘に我が道を歩んできました。自分のしたい勉強をしてきました。患者さんや仲間や仕事から学ぶことはたくさんあります。しかし、私たちが人生(いのち)の意味を学べるのは、一番身近な人たち(家族)からだと最近つくづく思います。家族は仕事や修業の上下関係ではないのです。生のぶつかり合いです。こちらの都合のいいようにはできません。命令や服従では動かない関係です。相手の人格に忍耐と許しと愛で、じっくりとゆっくりと付き合いながら学び合う、大切な関係です。

ウィマラさんがげん俗したのもそういう感じなのでしょうか?仏教教義や学習ではなく、自分の身近な人から学ぶ、という道をお選びになったのかしら?
(正直、家庭を営むということは、おそらく修行よりも辛いこともありますよね。)ですから、私も手を広げすぎず、じっくりと患者さんと付き合うのと同時に、家族との生活を何とか夫の協力で両立してきました。私にとっては両方共とても大切な存在です。

また、この書簡がスピリチュアルという、捉えることの難しいテーマであることも時間のかかったひとつの理由でした。教えて頂くと、「なるほど。」と分かった気がするのですが、しばらくすると忘れてしまうのです。メメントモリ(死を想え!)と教えながら、普段は“死”のことなどすっかり忘れてしまうことに似ています。ただ、スピリチュアル(魂)という言葉は、最近とても耳に届くようになりました。魂の希薄な時代だからこそなのでしょうか?

世界的ベストセラーの『ライラの冒険』では、ライラの住む世界では、魂はダイモンという動物の形で、人間と離れず行動しています。ダイモンはその人によって色々です。半分冗談でダイモン占いをしましたら、私のダイモンは虎でした。魂が無くなったら生きていけないライラの世界の物語は壮大で、心がせつなく震え、そして勇気とひと筋の希望を与えてくれる、すばらしい作品でした。久し振りに寝食を忘れて6巻を読みふけりました。まだでしたら、ぜひウィマラさんもお読み下さい。私たちの魂とは何だろう?と改めて原点に戻り、不思議な思いがします。

最後の回ですので、ぜひウィマラさんが深く学んだ、ヴィパッサナー瞑想法について、教えて下さいませんか?

少しでも、私たちの心がストレスから解放され、安らかで逞しく、強い気持ちで人生を学んでいけるために・・・自分自身の魂に出会えるために・・・
長い間、ご協力ありがとうございました。

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