エッセイ

北の旅日記 3日目

111020_12.jpg2日目の夜、色々な雄大な北の大地の景色を見ながら車で移動して、ついに3ヶ所目の帯広へ。高橋さんのお仲間も同行して下さって、約20名のいのちのツアー。どんなこともおもしろく、感動し、皆よく笑う。修学旅行のようだ。
帯広・十勝には、叔父夫妻、いとこ夫妻が住んでいる。いとこはワインの専門知識があり、池田町の十勝ワインに貢献している。2日目の夜は美味しいワインと十勝の名物料理をいとこからご馳走になった。夜はモール温泉。皆ツルツル肌になり、美人度アップ(笑)


3日目の10日午前中は、池田町ワイナリーの特別見学ツアー。もちろんいとこの案内。30年頑張ってきたいとこがとても立派に見えた。
酪寒の十勝で冬、どうぶどうを守るのかの説明を聞いた。手仕事で土に埋めていくのだ。山梨のぶどう棚作りとはかなり違う、垣根式。丁度ぶどうの収穫期。たわわに実った小粒のぶどうを味わわせてもらう。濃くてほんのり甘くて美味しい味。
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一行を残し、私は準備のために会場へ。帯広駅の前にある素敵な会場。講演が始まると、90歳近い叔父夫妻、いとこ夫妻が前に座っている。身内がいると緊張するが、自然体を目指す。
十勝には、ホスピス・緩和ケア病棟がなく、ホスピスケアの認知度も低く、がん患者さんもいらしていたようなので、少しでも参加の方々のお役に立てるよう頑張って伝えたつもりだ。帯広では来年、私が理事を務める日本ホスピス・在宅ケア研究会の全国大会の開催が予定されている。そのPRもした。
私は昨年、伊勢神宮、出雲大社の近くで講演するご縁があり、神話の世界に興味が湧いた。その流れで、梅原 猛さんの「古事記」という本を読んだ。日本語とアイヌ語の関わりの部分は特に驚いた。アイヌ語には、霊を表す言葉がいくつかあり、カムイ、イノッ、ピト、タマ、クス、など。これは、日本語の神、命、人、魂に通じる。
つまり、アイヌ語がこれらの単語の起源であろう、という説である。自然との付き合い方に尊敬すべき深い哲学があるアイヌ文化をみて、この説に出会って嬉しかった。読み進むとウチッシューという言葉が出てくる。
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これは、親しい人が亡くなって、取り囲んで悲しむ、悼む、という意味から、身内を指すらしい。そこで私ははたと気付いた。甲州弁にウチッキリという言葉がある。これが同じニュアンスで親しい仲間、身内という意味だ。私は妄想する。アイヌの人たちはこの甲州にも住んでいたのだろう・・・ウチッキリという言葉を残し。
90歳の末期がんのおばあちゃんの10ヶ月に付き合った時、介護していた娘さんに言われた。
「今では内藤先生がウチッキリのようで嬉しい」
私にとって最高の御礼の言葉。
なぜか、この帯広の会場の講演ではいつも以上にエネルギーが渦巻き、私が出会った患者さんたちのいのちのメッセージが強烈に伝わったように感じた。かなり笑いの渦もあり、お笑い芸人が来たのかと思われる場面も。
「楽しくて帰りたくなかったー」そんな感想を下さった方もいた。私も皆さんにまたお会いしたい、と思った。
「いのちのあいうえお」 美瑛の四季。そこに写し出されるいのちの雫たち。私も、あなたも、愛する人も、自然も、地球も、星たちも、いのちのキラキラする輝きを発して愛おしい。