お手紙

いのちに寄り添う講座『バリデーション入門講座』を聴いて

一般に人とのコミュニケーションについて語られるとき、傾聴・共感・受容 この三点について論じられることが多いように思います。バリデーションもこれらを内包していることには違いないのでしょうが、実に人間理解のための引き出しが多様で、奥深い。そして、限りなくあたたかく、人間味に溢れているのです。


 バリデーションは、言語的あるいは非言語的な関わりをもって認知症の方の感情に即して寄り添いつつ、認知症の方が充分に感情を表出できるように手助けをします。また、人生の終わりに未解決の問題の解決をする手助けをする事だといいます。つまりバリデーションのゴールはコミュニケーションだというのです。
 その根源には徹底した『人間』『いのち』への尊厳思想が存在します。崇高ですが手の届かない理想論を掲げるという訳ではなく、逆に今日からでも今の自分にやれるところからやってみようと、ごく自然に思わされるものがあるのです。
 この講座を通して、私はより一層「素の自分」になっていくことを促されたように感じました。人とのコミュニケーション、対人援助は「力を入れる」のではなく(頑張るというイメージではなく)、限りなく「力を抜く」ことにあるように思いました。また、バリデーションは認知症の方に限らず、病む人(特に終末期の方)、悩みを抱えた人、失望のどん底にある人など、全ての人に当てはまるように思いました。そして、最後に最も感動したことは、この講座の最後に締めくくられた「私たち自身の心の声にも向き合ってあげてください」とのことばです。あたたかく、力強い大きな力を得ました。「今のあなたのままでいい」と、そんな声が私の心の奥で響きました。
*** 当日のレジュメより抜粋 ***         
・・・大切な尊い仕事をすることは、同時に私たちのエネルギーもつかいます。
私たちは様々な感情をもった人間です。「天使」ではありません。
自分の正直な感情に馴染み、受け入れ、許し、手放すことが大切です。
私たちも感情をおしころしてはいけません。
お年寄りと同じく感情を表現することが大切であり、自分自身とも寄り添い向き合ってあげることが必要です。
そして、人生の砂時計を聴きながら年老いていくことを許し、成熟していくことを楽しみ、最後の幕を降ろす日を迎えていけたらと・・・・
※当日、たくさんの方から感想をお寄せいただきました。その一部を紹介します。
「お話を聞いて心があたたまる思いになりました」「感動した・・の、一言です」
「・・・今日の講演会は涙というよりも、泣きたい感情に何度かおそわれました。それを心の浄化というのでしょうか?」
「認知症の方の行動の裏側に深い真実が隠されていることがわかりました。全てを知ることはできなくても、感情を共有することで、相手に少しでも近づき、心を癒すお手伝いをしていきたいと思います」
「感情は出すべきだと思っていなかったので、本当に目からウロコが落ちたように思いました」
「心の目で相手に接することが本当に大切なんだと思いました。高齢者を尊敬し、受け入れる器になれるように勉強し、向上していきたいと思う」
「日頃接している多くの利用者さんの顔を思い浮かべながら、優しく穏やかな武田先生のお話を聴きました。とかく、けむたがられる認知症の方とどうしたら共に笑えるのか?といつも考えていましたが、〈沈黙を受け入れる〉〈コミュニケーションをとることがゴール〉と伺い、目からウロコでした。また、自分自身の過去と向き合うことができました。途中のビデオではおそらく会場で一番涙を流したと思います。投影することで認知症の方を自分のように思い愛おしみながら共に過ごせたらと思います」
※会場の広さの都合上、申し込みを希望された、かなり多くの皆さん(70人くらい)にお断りしなければならない結果となり、たいへん申し訳なく思っております。
1月の下旬にはすでに定員になるという状態でした。認知症の方にかかわる方々が、いかに研修の機会を求めておられるのかがよくわかりました。、
スタッフをはじめ、ボランティアの皆さん、参加者の皆さんのご協力に感謝いたします。
日本ホスピス在宅ケア研究会山梨支部 小池 ひろみ