ホスピス記事

がんの痛みは我慢しないで

薬剤師で、がん患者の傾聴などの活動をする石田有紀さん(36)=西宮市=が、医師と看護師の三人の編著で「がんの痛みよ、さようなら!」(金原出版、二千三百十円)を出版した。医療職の経験やノウハウを持ち寄り、痛みを取り除く必要性やケアの方法を説明している。石田さんは「痛みを感じたら我慢せずに、医師や看護師、薬剤師に伝えてほしい」と訴える。


がんの痛みは我慢しないで
神戸新聞1月14日より抜粋
石田さんは大学卒業後、薬剤師として勤務する中で多数の人の死に直面した。中でもがん患者の痛みや苦しみは大きく、長年付き添った家族が「よく耐えたね、本当によく頑張ったね」と最期を看取る様子を目にしたという。
そんな中で、「なぜ、がん患者はこれほど痛みと闘わなければならないのか」と疑問が深まった。
「痛みを当然とせず、取り除く手立てを示したい」と二〇〇五年九月、がん患者とその家族を支援する有限会社、メディカルケアプランニング(神戸市中央区)を立ちあげた。
現在石田さんが一人で運営するが、在宅ケアを希望する患者の訪問や傾聴、医師の紹介などのほか講演会やセミナーも開いている。情報交換や発信できるホームページも作った。今回の本は、これらの活動や出会いを通して生まれたという。
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編著者は、石田さんのほか武田文和・埼玉医科大学客員教授と、高橋美賀子・聖路加国際病院がん看護専門看護師。
本は二部構成で、一部で「がんの痛みの対応法早わかり」と題し、痛みの治療法や薬を使うときの基本原則、副作用への対策などを紹介。二部では、患者や家族から出されることの多い質問を挙げ、質疑応答形式で示している。「薬を飲み忘れたときはどうすればいいか」「麻薬を使うと〝中毒″にならないか」など計六十九の質問を取り上げ、体内での薬の動きや体の仕組みをを説明しながら答える。
治療法の変遷や、チーム医療の目的や内容も紹介している。 がんの痛みの治療法には国際基準があり、方法もさまざま。昨春には「がん対策基本法」が施行され、緩和ケアや放射線治療を進める「がん対策推進基本計画」が定められた。痛みを減らす方法の選択肢は広がったが、石田さんは「病院側の理解は十分でなく、緩和ケアのための入院も難しいなど、実際は利用できない場合が多い」と嘆く。
「モルヒネなどの麻薬は体に毒だ」という患者白身の誤解や偏見が治療を妨げていることもあるという。
石田さんは「医療関係者が当たり前だと思っていても、一般には知られていないことを中心に本に盛り込んだ。情報を得ることで、心身の痛みが少しでも和らげば」と話している。三千部を一般書店で販売している。
メディカルケアプランニング℡078・360・8336